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行政書士兼ウェブマーケター。ナガシマガジン運営者。サラリーマンとして働きながらウェブマーケティング会社を起業し独立。更にその後、仕事をしながら5カ月の勉強期間で行政書士試験に一発合格し、行政書士事務所を開業。
行政書士業界の現状を知る上で一番分かりやすい指標となるのが、行政書士の人数の推移と登録者数・廃業者数です。
年間にどれぐらいの人が新規に参入し、どれぐらいの人が撤退しているのかを知ることでその業界の状況が何となくつかめるのではないでしょうか?
以下では、行政書士の人数の推移や登録者数と廃業者数からわかる行政書士業界の現状に関する考察内容を紹介します。
行政書士の人数の推移で業界を考察
年度 | 人数 | 年度 | 人数 | 年度 | 人数 |
1989年 | 3,4515人 | 2000年 | 3,5163人 | 2011年 | 4,1584人 |
1990年 | 3,4620人 | 2001年 | 3,5024人 | 2012年 | 4,2177人 |
1991年 | 3,4848人 | 2002年 | 3,5319人 | 2013年 | 4,3126人 |
1992年 | 3,5029人 | 2003年 | 3,6417人 | 2014年 | 4,4057人 |
1993年 | 3,5208人 | 2004年 | 3,7607人 | 2015年 | 4,4740人 |
1994年 | 3,5345人 | 2005年 | 3,8105人 | 2016年 | 4,5411人 |
1995年 | 3,5509人 | 2006年 | 3,8875人 | 2017年 | 4,6205人 |
1996年 | 3,5659人 | 2007年 | 3,8883人 | 2018年 | 4,6915人 |
1997年 | 3,5737人 | 2008年 | 3,9203人 | 2019年 | 48,768人 |
1998年 | 3,5652人 | 2009年 | 3,9846人 | ||
1999年 | 3,5393人 | 2010年 | 4,0475人 |
上記のグラフと表は1989年(平成元年)~2019年(令和元年)までの行政書士の登録者数の推移を表しており、2019年において行政書士の登録者数は約5万人です。
過去30年の行政書士の人数の推移を見てみると、1989年から2002年までの13年間で行政書士の登録者数は804人しか増えていません。
しかし、2003年~2019年については毎年平均840人前後の登録者数が増え、この16年間で1,3449人も行政書士に登録する人が増えているのです。
そして、行政書士の人数が急激に増えたということは競合他社が急激に増えることを意味するので、必然的に稼げない行政書士も増えてしまいます。
つまり、昔は行政書士の数が少なかったので、行政書士の資格を持っているだけである程度の仕事が入ってきていたのが、今は行政書士の数が多く資格を持っているだけでは仕事が来ない状況になっているのが分かります。
因みに、こういった状況は行政書士業界だけに限った話ではなく、司法書士や弁護士、弁理士、税理士、公認会計士、社労士などのあらゆる業界で起こっています。
要するに、資格を持っているだけでは稼げない時代がどの業界においても到来していると言えます。
行政書士の登録者数と廃業者数で業界を考察
年度 | 平成29年度 | 平成28年度 | 平成27年度 |
年初登録者数 | 46,205人 | 45,441人 | 44,740人 |
新規登録者数 | 2,385人 | 2,526名 | 2,490人 |
廃業者数 | 1,675人 | 1,762名 | 1,789人 |
増減数(新規登録者数ー廃業者数) | +710人 | +764名 | +701人 |
年末登録者数 | 46,915人 | 46,205名 | 45,441人 |
近年の行政書士の人数が増加傾向であることは分かってもらえたと思いますが、新規で登録している人ばかりではなく廃業している人も中にはいます。
実際に上記の表を見ると毎年2000~2500人の人が行政書士として新規登録する一方で、毎年1600人~1800人もの人が廃業しているのです。
つまり、行政書士として登録した人の全てが上手くいっているというわけではなく、毎年一定数の人は行政書士として上手く結果を出せずに廃業している人もいるというわけです。
行政書士の廃業率
では一体、行政書士になった人の内、どれぐらいの割合の人が廃業してしまうのかでしょうか?
これは、行政書士の廃業率を計算することで分かります。
廃業率とは
廃業率とは特定の期間を対象に、期間当初に対してどれだけの人が廃業したかの割合を表す数字です。
そして、この廃業率は以下のような式で計算できます。
行政書士の廃業率(%)=廃業した行政書士の数÷年初の行政書士の数
2019年に廃業した行政書士の数は1,675人、2019年の年初の行政書士の数は46,205人なので、行政書士の廃業率は3.6%(1675÷46,205=0.036)となります。
つまり、行政書士全体の3.6%の人が廃業に追いやられているというのが現状のようです。
因みに、中小企業庁発表資料である「中小企業白書」において、一般的な事業での廃業率は3.5~4.5%程度となっているので、行政書士の廃業率と近しい数値となっており、特別に行政書士の廃業率が多いというわけではないことが分かります。
廃業者の15~20%に関しては稼げなくて廃業しているわけではない
平成29年 | 廃業者数 | 割合 |
廃業届 | 1,374人 | 82% |
死亡 | 288人 | 17% |
その他 | 13人 | 1% |
合計 | 1,675人 | 100% |
更に、行政書士の廃業率に関しては興味深いデータがあります。
それは、行政書士を廃業する人の15~20%の人に関しては食えなかったり稼げなかったりして廃業しているわけではないという点です。
というのも、行政書士として登録を抹消する事由の中で最も多いのは廃業届ですが、その廃業届を提出して行政書士の登録抹消をする人は全体の70%程度だけなのです。
そして、その次に多い事由が死亡による行政書士の抹消による廃業者で全体の15~20%を占めています。
「え?なんで廃業者の中で死亡事由の割合がそんなに多いの?」と驚いたかもしれませんが、行政書士の平均年齢はかなり高齢となっている上、自営業で定年退職もないのでこのようなことが起こりうるのです。
つまり、実際に食えなくて廃業している人の割合というのは行政書士全体の3%弱となります。
業界の現状は悪くないけど将来的には厳しくなると考察
行政書士の人数の推移や登録者数・廃業者数を見る限り、業界の現状としては悪くないと言えます。
なぜなら、行政書士として登録する人は毎年2500人前後と一定で、登録者数が年々増えているにもかかわらず、廃業している人の数も年々一定だからです。
仮に、行政書士業界が飽和状態にあって仕事がないのなら、登録する人よりも廃業する人の方が多くなっていてもおかしくありません。
それにもかかわらず、登録者数が増えているということは、業界全体が飽和するほどの行政書士が多くなっているわけではないということが言えるのではないでしょうか。
ただし、行政書士業界の10年、20年先を考えた場合には業界全体的に厳しくなるのではないかと考察します。
なぜなら、将来的には行政書士の仕事というのはAIに取って代わることが可能な仕事なので、行政書士の仕事は将来的にかなり減少していく可能性が高いです。
というのも、政府の方針として2018年度に約9億8000万件ある行政手続きのうち、2024年度には8億9000万件にあたる9割の行政手続きのオンライン化を計画していると発表されているからです。
さらに、行政書士の人数がこのままのペースで増え続けると、10年後には行政書士の数が6万人前後となり、平成元年の行政書士の数の約2倍になります。
仕事が減る一方で行政書士の数が増えるということは、急激に廃業に追いやられてしまう行政書士が増える可能性があるというわけです。
もちろん、何度も言うようですがこれは行政書士に限った話ではなく、他の資格においても同じことが言えます。
まとめ
行政書士の人数の推移はここ数年、毎年800~1000人程度ずつ増加する傾向にあります。
そして、このまま方針が変更されなければ、今後も行政書士に人数は増えていくことが予想されます。
となると、10年後、20年後は今以上に行政書士業界の競争は厳しくなることが予想されるので、競争が激化した中でどのように生き抜いていくかの戦略がより大切になってくるのではないかと思います。
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長島 雄太
NAGASHIMA行政書士事務所