この記事を書いた人
行政書士兼ウェブマーケター。ナガシマガジン運営者。サラリーマンとして働きながらウェブマーケティング会社を起業し独立。更にその後、仕事をしながら5カ月の勉強期間で行政書士試験に一発合格し、行政書士事務所を開業。
行政書士試験というのはいわゆる合格基準が絶対評価の試験で、300点満点中180点以上を取れれば合格です。
300点満点中180点以上ということは、全体の6割正解すれば合格ということですよね。
ということは、2問に1問正解すれば5割なので、それプラスαで数問正解すると合格できるレベルです。
こうやって聞くと行政書士試験って簡単に合格できそうな気がしませんか?
でも、実際には行政書士試験の合格率というのは大体10%前後と結構低いです。
なぜ、6割正解するれば合格の試験なのに、合格率がこんなに低いのでしょうか?
それは、数字だけでは見えてこない難しい要素があるからです。
この記事では簡単そうに見えるのに、行政書士試験の合格率が低い理由について解説していきます。
▼記事の内容はYouTubeでも解説しています▼
行政書士試験の合格率が低い理由
冒頭でも少し触れましたが、行政書士試験の合格基準が全体の6割と、決して高い基準ではありません。
それにもかかわらず、ここ最近では行政書士試験の合格率が10%~15%と上昇してきていますが、過去10年の行政書士試験の合格率をトータルで見ると他の資格試験に比べて低いです。
では、なぜ行政書士試験の合格率がこのように低いのかというと以下の理由が挙げられます。
- 簡単に取れると誤解して受験する人が多い
- 出題形式が5者択一式・多肢選択式・記述式
- 足切りラインが設けられている
- 記述式の採点で合格者数を調整している
- 数字で見るより試験の難易度が高い
理由1:簡単に取れると誤解して受験する人が多いから
法律を知っていることで実生活に役立つことも多いので、世の中には法律に興味を持っている人はたくさんいます。
そして、そういった法律に興味を持っている人が勉強をする時に目標とされやすいのは行政書士資格です。
というのも、同じ法律系の資格である弁護士や司法書士というのは国家資格の中では超難関資格に分類されるしかくなので、少し勉強しただけでは合格できず、簡単に取得できる法律系資格としてのイメージがある行政書士をとりあえず目指してみようと考えるわけです。
しかし、ここに誤解があります。
確かに、弁護士や司法書士に比べると行政書士の方が圧倒的に簡単に取得出来ます。
ただ、これは国家資格の中でも最高レベルに難しい弁護士や司法書士と比較すると簡単なだけであって、行政書士という試験自体が簡単なわけではありません。
実際に、行政書士試験は資格の中では難関資格に分類される資格で、ある程度のまとまった時間勉強しなければ合格は出来ません。
しかし、あまりにも「行政書士は簡単」というイメージが世の中には強く、あまり勉強しなくても受かるだろうという軽い気持ちで受験する人が多いため合格率が低くなってしまいます。
理由2:出題形式が5者択一式・多肢選択式・記述式
特にマークシート形式の試験であれば、答えがわからなくても消去法や適当に回答して正解することも可能なので、合格基準点が6割と聞くと何となく運が良ければ受かりそうな気がしますよね?
ただ、行政書士試験はそこまで甘くありません。
行政書士試験の選択肢問題は5者択一式の出題なので、感で答えた場合の1問当たりの正解率は20%と低いです。
しかも、多肢選択式に関しては20個の選択肢の中から、適切な語句を適切な順位4個選ぶというような出題形式なので、適当に回答して正解する可能性は極めて低いです。
さらに、行政書士試験の最大の難関となるのが記述式で、3問出題されるのですが、その配点は全体の5分の1を占めます。
ということは、行政書士試験に合格できるかどうかは、記述式でどれぐらい得点できるかがカギとなるわけですが、もちろん選択肢問題のように適当に回答して正解するような問題ではありません。
つまり、行政書士試験というのは適当に回答して正解できる問題が少ないので、合格率が低くなってしまうわけです。
理由3:足切りラインが設けられている
行政書士試験には足切りラインが設けられています。
足切りラインというのは、要するに合格基準点を超えていたとしても一定の基準をクリアしていなければ不合格となってしまう基準の事です。
そして、行政書士試験において設けられている足切りラインは以下の2つです。
- 行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、満点の50パーセント以
- 行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、満点の40パーセント以上
つまり、法令科目に関しては246点満点中124点以上、一般知識科目に関しては56点満点中23点以上を上回らなければ合計で180点以上でも不合格となってしまいます。
因みに、法令科目が123点以下であれば一般知識で満点を取ったとしても180点には届かないので、実質的に足切りラインが機能するのは一般知識だけだと言えます。
ただ、この一般知識がかなり曲者で、出題される範囲がかなり広いので試験対策が難しく、勉強時間を割いたからと言って得点できるわけで保証はありません。
実際に、法令科目で7~8割得点できたのに一般知識で足切りになってしまったという人も少なくない状況で、この足切りラインがあることで合格率が低くなっています。
理由4:受験者数で合格者数を調整している
行政書士試験の合格基準は相対評価ではなく、絶対評価となっているので試験で180点以上を獲得すれば合格することが可能です。
しかし、記述に関しては受験者の法令科目+一般知識の出来によって採点を甘くしたり厳しくしたりするので、その年によって記述で獲得できる点数が大きく変わると言われています。
つまり、行政書士試験は100%の絶対評価である試験というわけではなく、相対評価的な側面もある試験だというわけです。(マークシット部分だけで合格点に達すれば絶対評価で合格可能。)
なので、行政書士試験の受験者数が増えれば、合格者数を調整するために記述の採点が厳しくなり、必然的に合格率は下がってしまうことになります。
理由5:数字で見るより試験の難易度が高いから
何度も言いますが、行政書士試験は300点満点中180点と、全体の6割を正解出来れば合格できるので、イメージ的には簡単に合格できそうですよね。
でも、実際に試験を分析すると意外に難易度が高いことが分かります。
例えば、基礎法学に関しては試験範囲が広く、出題形式が予測しにくいわりに、出題数は2問と少ないので対策の仕方が難しく2問とも正解するのはかなり難易度が高いです。
商法に関しても出題数が少ないのに範囲が広く、民法や行政法のようにじっくりと勉強時間を割けないので4割~5割正解出来ればいい方で、商法を勉強せずに棄ててしまう受験生も多いです。
さらに、記述に関しては理由4でも紹介したように、その年によって採点の甘さが違うので5割程度の見込みで考えておいた方が良いでしょう。
となると、全体的な合格基準点は6割ですが、合格するためには最低でも行政書士試験のメイン科目である民法・行政法などで7~8割程度得点できなければ合格できないのできない試験なのです。
しかも、行政書士試験で出題される民法や行政法は出題範囲が広い上に、深い知識を問われる問題も出題されるので、民法や行政法で7~8割の得点を獲得することは決して簡単なことではありません。
また、行政書士の業務の中には行政書士資格を持っていなければできない独占業務があります。
この行政書士の独占業務に関しては、司法書士などの行政書士よりも難しい法律系の資格を取得している人でも業務を行う事が出来ません。
つまり、行政書士の独占業務も行いたい司法書士なども行政書士試験を受けているのです。
更には、弁護士や司法書士、弁護士の予備試験を勉強している人が力試しの一環として行政書士試験を受ける人も一定数います。
という事とは、行政書士試験の合格率は10%前後ですが実際に法律初学者で行政書士試験に合格している人というのは、数字で表れているよりも少なく、数字で見るよりも難易度が高いというわけです。
だから、行政書士試験というのは数字で見るよりも実際には難しい試験なので合格率が低くなってしまわけです。
最近は合格率が上がっているけど試験は難化傾向にある
少し前までは行政書士試験の合格率は5~10%前後で推移していたのですが、ここ数年は10~15%前後で推移しており、合格率は上昇傾向にあります。
ということは、行政書士試験が簡単になってきているのかというと、むしろ逆で難化傾向にあります。
なぜなら、受験者数は減少傾向にあるのですが、受験者の質は上昇傾向にあるからです。
今でも行政書士試験は簡単に取れるというイメージが強かったのですが、以前は今以上にそのイメージが強くたくさんの人が行政書士試験を受験していました。
しかし近年では、行政書士試験は実は難しいという認識が少しずつ浸透し始めていて、あまり勉強せずに軽い気持ちで試験を受ける受験者が減ってきている一方で、しっかりと勉強して試験に臨む受験生が増えているのです。
つまり、受験生は減る一方で、受験生の質は上がっているので合格率は上昇しているものの、試験全体としての難易度は難しくなっているというわけなのです。
まとめ
行政書士試験は確かに弁護士や司法書士と比較すると簡単に取得できる資格です。
また、合格基準点も6割なので簡単に取れそうなイメージがどうしても先行してしまいます。
しかし、実際に行政書士試験について分析すると、行政書士試験があまり勉強せずに誰でも合格できる簡単な試験では決してないということがわかると思います。
だから、もしあなたが行政書士試験を受けようと思うのであれば、舐めてかからずに、事前にしっかりと試験対策をしたうえで受験することをおすすめします。
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長島 雄太
NAGASHIMA行政書士事務所